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私の為替相場の予想について


為替相場の研究をしていると言うと頻繁に

「今後の為替相場はどうなると思いますか?」 と聞かれます。


まぁ、正直わからないというのが答えです。
もし、確実に将来の為替相場が分かったら1000兆円くらい借りてきて私が儲けます(笑)

「分からないだとっ!?役立たずっ!!」と怒られそうなので追記すると、
何も分からないわけではありません。


例えば、今日から30日後、つまり1か月後に為替相場がどのくらい変動する可能性があるかということは分かります。



上の図は、1998年1月〜今日現在(2016年6月13日)までの為替相場のデータを使って為替相場の変動がどのくらいの頻度で発生するかをグラフにしたものです。サンプル数は6705です。
変化率の説明はいらないかと思いますが、100円から103円になったら(103-100)/100=0.03、つまり+3%変化したことになります。


この図の見方ですが、例えばある日から30日後の為替相場の変動が−1%から0%の範囲内だった頻度が957回というグラフになります。横軸のゼロのところを見ると957という高さになっています(-1%<x≦0%)。大雑把に言うと、1か月で為替が9〜10%くらい動いたケースは横軸10のところを見て15回ということが分かる感じです。



このグラフからわかることは、

1か月後の為替相場が-3%から+3%の変動の範囲内に収まる場合が約72%

(615+852+957+973+771+631=4799で全体の数が6705ですので4799/6705=0.716)


今日の為替相場が1ドル=100円だとしたら、1か月後に1ドル=97〜103円の間になっている場合が72%程度ということになります。まぁ、72%程度の確率だと思ってください。今日の為替相場が1ドル=100円なのに「一か月後に1ドル=110円になる!」という予想を立てるとほとんど当たらないということは言えます(笑)
そして、「1か月後に1ドル=97〜103円の間になると思うよ」と答えると7割くらい当たることになります。天気予報みたいなもんです。


今日の為替相場が1ドル=100円のときに「1か月後に1ドル=85〜115円の間になると思うよ」と答えるとほぼ予想を外さないことになります(笑)


サイコロは6分の1の確率でそれぞれの目が出ることが分かっていますが、どの目が出るかは振ってみないとわからないのと同じで為替相場もどの値になるかは分かりません。「1か月後の為替相場は具体的にいくらになりますか?」という質問は、皆さんが他の人から「このサイコロを振ったらどの目が出ますか?」という質問をされるのと同じくらい返答に困るイメージです(笑)


ちなみに

平均値は-0.030パーセント

中央値は-0.012パーセント

でしたので、おおまかにいってゼロ%が中心です。つまり、今日の為替相場からあんまり大きく変わらないことの方が多いと考えるのが無難です(笑)
投資家の利用可能な情報が現在の為替相場に反映されているため、上がるか下がるかが半々になっています。


参考までに

最大値は+11.27パーセント

最小値は-14.82パーセント

標準偏差は2.99でした。


今回は適当にサンプル期間を選んだのですが、この期間を選んだのは皆さんにとってデータの入手が簡単な日銀のサイトに合わせたためです。 日次の為替レートは時系列統計データ検索サイトここにあります。興味のある人はデータを見てみてください。


金融資産の価格は、皆が上がると信じれば皆が買うため、実際に価格が上がるという信じる者は救われるという宗教チックな面(笑)もありますが、過去の変動を見ると案外見えてくるものも多いということです。



結論としては、今日から30日後の為替相場はプラスマイナス3%の間に入る可能性が7割。
最も当たりやすい予想は、現在の為替相場と同じくらいのことが多いと考えること。
ということが経験的に言えます。(参考になったのでしょうか?汗)




なぜ山型の分布になるのか??

理由は下記の通りです。(すごく簡単化して説明しています)

今日の時点で為替相場が1ドル=100円だったとしましょう。

一日後に50%の確率で1円上がるか、1円下がるかがランダムに決まっているとしましょう。



神様がコインを投げて表が出れば明日の為替相場が+1円、裏が出れば−1円、といったイメージでランダムに為替相場が動いているとします。

1日後は99円になっているか、101円になっているかのどちらかです。

次の日も50%の確率で1円上がるか、1円下がるかがランダムに決まっているとしましょう。

2日後はどうなっているでしょうか?



2日目は4パターンの可能性があります。

・二日連続で上昇して102円になる場合
・1日目に上昇して2日目に下落して100円になる場合
・1日目に下落して2日目に上昇して100円になる場合
・二日連続で下落して98円になる場合

この4通りのうち、2つは100円に戻ってきます。
つまり、4分の2の確率で100円に戻ってくることになります。

経路の数を図で表すと次の通りになります。



4日後はどうなっているでしょうか?

4日後は16パターンの可能性があります。

分かりやすいところだと、

・4日連続で上昇して104円になる場合
・4日連続で下落して96円になる場合

があります。



4日後に102円になる経路は次の4通りがあります。

・上昇、上昇、上昇、下落で102円になる場合
・上昇、上昇、下落、上昇で102円になる場合
・上昇、下落、上昇、上昇で102円になる場合
下落、上昇、上昇、上昇で102円になる場合

4日後に100円になる経路は次の6通りがあります。

・上昇、上昇、下落下落で100円になる場合
・上昇、下落、上昇、下落で100円になる場合
・上昇、下落下落、上昇で100円になる場合
下落、上昇、下落、上昇で100円になる場合
下落下落、上昇、上昇で100円になる場合
下落、上昇、上昇、下落で100円になる場合

上下で対称なので、4日後に98円になる経路は4通りです。

ややこしくなってきましたが、経路の数をまとめると下の図になります。



つまり4日後に100円になっている可能性は全16通りのうち6通りもあり、最も起こりやすいことになります。

4日後に102円または98円になっている可能性は全16通りのうちそれぞれ4通りです。

4日後に104円または96円になっている可能性は全16通りのうちそれぞれ1通りです。

これをグラフにまとめると次の図になります。



為替相場がランダムに動いている場合、元の場所に戻ってくる場合が最も多く、大きく変動する可能性は小さくなります。 そのため、山型の分布になります。


(補足)この説明だと為替相場が遠い将来にマイナスになる可能性もあるので通常は、



というように、パーセントで変化すると考えます。これだと為替相場が1ドル=0.1円のときに−1%さがっても1ドル=0.099円になるため、為替相場がマイナスになることを避けられます。


長期的には購買力平価という考え方があり、日本とアメリカの物価の推移によって影響を受けます。

相手国と比べてインフレの激しい国の通貨は安くなります(減価)。

詳細は下記リンクを参考にしてください。
主要通貨購買力平価(PPP)|公益財団法人 国際通貨研究所


ボロ儲けできるほど世の中は甘くないです・・・トホホ(笑)





(2016年6月15日更新、2019年4月10日追記)


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