身近な国際経済学:輸入と関税
輸入
授業では、輸出や輸入、関税等を学びます。
国際経済学を身近に体感する方法として、輸入があります。
現在では、インターネットで外国の商品を購入することで(自宅でゴロゴロしながらでも)簡単に輸入を体感できます。
2009年11月20日の為替相場は、日銀のサイトによると1ドル=88.79円でした。普段ニュースで目にするのはインターバンク(銀行間)のレートです。2009年11月は14年ぶりに円高が進行した時期でもあります。
そこで、円高なので輸入してみました。(2009年11月20日時点)
例として、以下のアメリカのサイトからアバクロの服を輸入してみます。
(なお、2009年12月に銀座店がオープンしたため、現在下記サイトでは価格が日本円表示となっています。現在では輸入にならないですが・・・)
www.Abercrombie.com
例えば、以下の3着を注文しました。
左から、200ドル、80ドル、60ドルです。(一番右が小さいのは奥様用です)
注文内容
ITEM | PRICE |
服(左) | $200 |
服(中) | $80 |
服(右) | $60 |
Subtotal | $340 |
Shipping & Handling | $75 |
Order Total | $415 |
商品自体の合計は340ドルです。
輸送費と手数料が75ドルで、総合計は415ドルです。
理論ではよく無視をしてしまう輸送費と手数料が、現実の世界では無視できません・・・。
もう一着買えそうなくらいです。
為替相場の水準によって、日本円での価格は違ってきます。
同じ415ドルでも為替相場が
- 1ドル=110円なら4万5650円
- 1ドル=100円なら4万1500円
- 1ドル=90円なら3万7350円
となります。
11月18日に注文して11月24日に到着しました。
1ドル=90.689円だったので
ITEM | PRICE | 日本円では |
服(左) | $200 | 1万8137円 |
服(中) | $80 | 7255円 |
服(右) | $60 | 5441円 |
Shipping & Handling | $75 | 6801円 |
Order Total | $415 | 3万7635円 |
今回は、カード会社の為替相場が1ドル=90.689円だったので
合計3万7635円でした(換算日2009年11月20日)
このように、自宅にいながらにしてアメリカから輸入することができました。
自由貿易の恩恵ですね。
関税
今回、輸入したのは関税の具体例を示そうというのが、本来の目的でした。
しかし、結局関税はかからないのか?と思っていると・・・
関税が1品だけかかりました。
後で請求書が郵送されてきました。
200ドルの服(左)が編物製衣類の項目にあたるようです。ここを参照。
興味がある人は実行関税率表を見てみると良いでしょう。非常に細かく分類されています。
どうやら、このフェイクファーの部分が保護主義者の怒りに触れたようです。
送られてきた書類には、
税表番号 6101.20-1
関税率 10.9%
原産地 INDIA
とあります。
内訳
| 税率 | 金額 |
関税 | 10.9% | 1900円 |
消費税 | 4% | 800円 |
地方消費税 | 1% | 200円 |
FedExの手数料 | - | 500円 |
計 | - | 3400円 |
何度か端数処理をするので、以上のように。
結局、関税等を3400円払うことになりました。
なお、今回のケースでは携帯電話の料金のようにコンビニで払えました。
ということで、200ドルの服は1万8137円から2万1537円に。
そして、私の消費者余剰が3400円分減少したのでした・・・。
(政府が税収を私に還元してくれそうにもないですし)
関税は制度がややこしいのでご注意を。
内外価格差
2009年12月に銀座店がオープンしたため、面白いことがわかりました。
今回、私が輸入した商品と同じ商品が日本で売られ始めました。
そこで、2009年11月に輸入した値段と比較してみましょう。
価格の比較
ITEM | PRICE | 私が輸入した価格 | 日本価格 |
服(左) | $200 | 1万8137円 | 3万5700円 |
服(中) | $80 | 7255円 | 1万4200円 |
服(右) | $60 | 5441円 | 1万0800円 |
送料等(6801円)と関税等(3400円)を合わせると、私が輸入した総額は計4万1035円です。
日本で売られている価格の総額は計6万0700円です。
2万円も高いです。アメリカから4万1035円で輸入して、日本で6万0700円で売ることで儲けることができる商品裁定の機会があることがわかります。一物一価の法則は成立していないようです。
逆に、ビックマック指数のようにアバクロ指数を作ってみましょう。
3つの商品をまとめて指標を作るとすると、日本では6万0700円で売られている同じものが、アメリカでは340ドル($200+$80+$60)で売られているので、6万0700円の日本円と340ドルのアメリカドルは同じ通貨の価値(購買力)を持っているといえます。
このアバクロの商品(バスケット)のみを基準とした両通貨の購買力が等しい為替相場は、
アバクロ指数=(6万0700円)/(340ドル)=178.53
より、1ドル=178.53円であることがわかります。輸送費と関税を含んでも現実の為替相場とは大幅に離れています。なぜでしょうか?
市場が分断されており、日本とアメリカで価格差別化が行われている可能性があります。日本人は高くても買うので高い値段設定を、アメリカではあまり高級なイメージがないので安い値段設定という感じで、異なる価格設定をしているからでしょう。
ちなみに、アメリカのセールで購入すると、
写真左は29ドル(3000円弱、ワシントンDCペンタゴンシティ店で購入)、右は49ドル(5000円弱、サンフランシスコ店で購入)でした。
私が普段2900円程度の服を着ていることがばれてしまったので、今回の輸入についての記事を終わります。(2010年4月29日更新)
注:個人輸入は自己責任で!!
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