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大学院の歩き方

私自身、学部、修士課程、博士課程といろいろな大学で 学歴ロンダリング ステップアップしてきました(笑)
大学院進学(経済学)を考えている人のための参考ガイドです。
決して、大学院進学を勧めるものではありません。

更新日:2013/3/7


行くべきか?行かざるべきか?

大学全入時代と言われ、現在は誰もが大学に行きます。そのため、昔と比べて大学の学部卒は珍しくなくなっているのかも知れません。 また、今後50年スパンで考えると、将来的には多くの人が大学院に進学し、修士号を持っているのが普通の時代が来るかもしれません。

そういった情勢の中、大学生活の中で深く学びたいものが見つかったなら、進学するのも一つの選択肢としてなるでしょう。ただ、大学院進学には大きなコストも掛かります。

まず、費用対効果を考えましょう。

大学院進学は、大学生活と同じく授業料に生活費、さらに高価な本を買う機会が増えるなどの費用がかかります。通常、奨学金を借りますので、借金が雪だるま式に増えていきます。

そして何より、歳を取るという時間のコストがかかります。学部で2年留年するくらいなら、留年せずに学部を卒業したのち大学院を出て修士号を取った方が良いのは間違いないですが、浪人・留年をしていなくても大学院の修士修了時に24歳になってしまうというハンデを背負うことになります。

もうひとつ注意点としては、文系の場合は必ずしも(民間の)就職にプラスになるとは限らないという点です。もちろん、マイナスにはそれほどならないと思いますが、過剰な期待は避けるべきでしょう。

大学院進学の良いところをあげておきます。

メリット
  • 優秀な友人がたくさんできる。
  • 優秀な人と競争しているうちに、飛躍的に自分自身が成長する。
  • 努力すれば専門知識が得られる(努力できる時間がある)。
  • 世界トップクラスの賢い人々が、自分と比べてどのくらい賢いのか体感できる(絶望しながらも普通の人だなぁと身近に感じる)。
  • 普通あえないような有名な人に会えて、視野が広がる。
  • 友人・先輩の中から(もしくは自分が)大学の先生になる人がいる。
  • 修士号をもらえて学歴が上がる。
  • 大学院に行かなければ広がらない未来が広がる(意味不明...)。
高校生の「考え方・物の見方」は中学生の「考え方・物の見方」とは異なると思います。同じように、大学生も高校生とは考え方や物の見方が違います。それと似たようなもので、院生は学部生とは違う考え方や物の見方ができるような気がします。あくまで「気がする」だけですが...。高卒の人に大学の良さを伝えるのが難しいように、大学院の良さを言葉でうまく説明できませんが、学問とはそういう物だと思います。もちろん、行かなくても生きていけると言われればその通りだと思います。

修士卒業後の就職についてですが、私の周りの人の印象では、修士(経済学)での民間企業などへの就職もなかなか良いような気がします。ただ、その人たちが優秀だから大学院に来ている可能性があって、大学院のおかげで就職が良いのか因果関係はわかりません。もしくは、うまくいった人の噂だけを私が聞いているのかもしれません。サンプリング・バイアスと因果関係、景気の善し悪しが関係していて参考にならないですが感想です。

メリットの番外編として、みんなに「賢い」と尊敬(勘違い)されることがあります。また、大学院入試は学部ほど競争率が激しくないため入学しやすく、モラトリアム期間を延ばすという後ろ向きな考え方もあり得るかもしれません(非推奨)。ただ、大学卒業後に不況でニートになるくらいなら大学院に進学して力を付けた方がましだと思います。不況期には必要以上に安く労働を買いたたかれますので、大学院で不況をスルーするというのも安易に否定できないような気がします。忘れてはならないのは、大学院は勉強・研究する場所であるということです。ボヤボヤしていると、修士論文が書けずにM3をする(留年する)ということも大いにありえます。

修士号がもらえるというメリットと比較して、以下のことを自問自答してみてください。

デメリット
  • 200万円位の奨学金借金地獄になってもいいですか?
  • 万が一、就職に役に立たなくてもいいですか?
  • 周りが優秀なため落ちこぼれてしまう可能性がありますが、耐えられますか?
  • 24,25歳といういい歳して新卒になってしまってもいいですか?
  • みんな給料をもらっているのに、授業料というお金を払ってまで徹夜で勉強できますか?
デメリットではありませんが、以下も重要です。
  • 学費や生活費という資金は調達できますか?
  • 両親はサポートしてくれますか?
  • そもそも研究したいですか?
これらの質問にYESという答えをはじき出す人は、進学してもいいんじゃないでしょうか。

大学院修士課程の罠
デメリットのひとつとして、修士課程に行くと、勉強が楽しくなり、ドクターに進学したくなるという罠があります。これは慎重に考えて進学しないと大変なことになります。修士号を取得した後に、博士課程に突入すると後戻りはできず、最短で27歳、通常30歳近くまで大学院生をするはめになります。また、数少ない大学教員のポストを数多くの院生で奪い合うことになります。博士課程になると、東大・京大どころか海外の大学院卒といった修士の段階とは桁外れに優秀な人がひしめいています。

とりあえず私の印象としては「修士課程には行っても良い」、そして「博士後期課程に行くのはやめよう」という感じです。



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大学院の選び方

自分に合う良い指導教官とめぐりあうことが大切かと思います。
私自身、今持っている知識、論文、博士号、研究環境、研究費、人脈、大学教員の職、そしてチャンス・・・これらのものは大体指導教員のおかげで手に入ったと言っても過言ではありません。
しかし、自分に合うというこればっかりは運の要素が強いです。

研究者になりたい人は研究ができる先生のもとで学ぶと、結果的に論文のパブリッシュが増え、就職ができる可能性高くなります。

では、どんな人が研究ができる人なのか?
次の日本の経済学者のランキングを見ましょう。
Top 25% authors in Japan

ここに載っている人は日本で凄腕です。
凄腕過ぎて忙しくて構ってもらえないかもしれませんが、バンバン国際的な雑誌に論文を載せている人です。
ここに載っていてかつ若い先生に指導してもらうのがベストな予感。

えっ、私は何位かって?
RePEcによると私のランキングはJapan (you rank 412 of 664, top 63%), Asia (you rank 1436 of 3043, top 48%)だそうです。日本で412位って我ながらショボい。(2013年3月現在)

そして大学院はやはり大学院生数が多いところがいいでしょう。
先生がすごいのは当たり前ですが、同級生がすごいのはとても刺激になります。
院生数が多いところは将来卒業するときにジョブマーケットで自分と競合する人たちがどのくらい優秀なのかという目安が付きます。
そのほうが、この方向は勝てないとか、この方向はいけるかもしれないといった自分の研究の方向も見えてくるかもしれません


ジャンルが全然違いますが、長崎大学水産学部海棲哺乳類研究室の「大学院・研究者を目指す人へ」というページがとても参考になります。



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【マスター】修士編

修士は勉強あるのみです。 ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学・統計を必死に勉強しましょう!

経済学の定番教科書についてはこのページを見ましょう!!どの本もおすすめ!!
大学院のところの本はどれも超重要です。
経済学の定番教科書

そして、修士論文は海外のJournalに投稿するつもりで書きましょう!!



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【ドクター】博士編

博士課程は論文のパブリッシュに全力を尽くすのみです。

基本的に、論文を書いて発表・投稿し、海外のJournalに何本どこに載せるかの勝負になります。
そして、最終的には博士論文を書いて博士号を取るという流れです。

博士課程の人たちがどんな感じのパブリッシュがあるか気になると思います。
たとえば神戸大学のドクターの人たちのパブリッシュは六甲台研究奨励賞(岸本賞)というページを見るとわかります。

大学院生活では、論文投稿の手順など意外と知らないことが多く戸惑います。
そこで、私が知っている範囲で役立ち情報を紹介します。

英文校閲

まず、英語で論文を書くと、どこで英文校閲をすればよいのか?
また、どこが安いのか?という問題があります。
私が知っている英文校閲サイトは以下の3つです。

Editage

FASTEK

大学院生の場合、予算面からEditageになると思います。

ちなみにEditageだと、中の人がJournalの投稿規程に沿って形式を整えてくれます。参考文献の書き方等、意外と面倒なのでありがたいサービスです。



論文の投稿

現在は、オンライン・サブミッションが主流なので、その仕方を説明します。まず、Journal Home pageからログインします。アカウントを持っていないときは、作ります。

ログインした後にサブミッションというところを押します。タイトルやアブストを書いた後、本文をアップロードすれば、出来上がり。なんとなくの勘で進むことができます。

多くの雑誌は、図や表のファイルを分けてアップロードする必要があります。

PDFファイルがきちんと出れば完了です。

 

いらないところも多いのですが、少し有名なところだとサブミッション・フィー(投稿料)がかかります。わかりにくいので例を挙げます。例えば一般US$250,学生US$150のサブミッションフィーがかかるとします。クレジットカードが使えるところもあります。クレジットカードが使える場合はそれが一番便利でしょう。
クレジット・カードが使えない場合も一応紹介しておきます。郵便局でMoney Orderくださいというと外国への郵便為替を作ってくれます。(注意:身分証がいります)

その時、記入する紙は長々と書いた後に書き直しを命じられることがしばしばあります。

学生の場合、150ドルなので1万5千円くらいかなと甘い認識で行くと手数料が2000円かかるので(1ドル118円くらいだと)2万円くらいになります。

ちなみに
"Submission fees are required for all new and revised manuscripts unless it is being resubmitted following an "accept with minor revisions" decision."

と、書かれている場合はアクセプトされるまでリバイス(改訂)にも毎回サブミッション・フィーがかかります。

それを封筒に入れて送ると完了です。



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博士課程の就職活動

JREC-IN研究者人材データベースで該当するものを探しましょう。そして、送ります。そして、待ちます。

ちなみに、毎年8月が公募のピークです。8月がピ−クであるため、D3の前期が最も応募書類を出す時期です。その時期に業績を書かなければいけないので、D2の終わりまでにどれだけ業績を上げられるかが重要になります。

そう、業績がないと面接にさえ呼ばれないという苦難の時が続きます。



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学振貴族への道

博士課程を修了した後に、最も食いつなげる可能性が高いものに学振があります。

学振とは、独立行政法人日本学術振興会特別研究員のことです。

給料をもらって研究を3年間することができ、食いつなぐことが出来る上に、おそらく研究がはかどり、かなりステップアップできます。

出所が気になると思いますが・・・私が応募したときの採用率は以下の通り。

[PD] 2006年度(平成18年度)
┌──┬──┬──┬──┬──┬───┐ 
│領域│申請│採用│面接│不採│採用率│ 
│人文│. 753│ 82 │ 19 │. 652│10.9% │ 
│社会│. 748│ 82 │ 17 │. 649│11.0% │ 
│数物│. 761│ 83 │ 20 │. 658│10.9% │
│化学│. 240│ 26 │.  7 │. 207│10.8% │
│工学│. 449│ 49 │ 11 │. 389│10.9% │
│生物│. 583│ 63 │ 15 │. 505│10.8% │
│農業│    │    │    │    │      │
│医歯│. 388│ 42 │ 11 │. 335│10.8% │
└──┴──┴──┴──┴──┴───┘
(出所)2ちゃんねる「学振・科研費総合スレ Part 22」>>5より。
なお、採用率は面接免除 (小数点第二位を四捨五入)

[PD] 2007年度(平成19年度)
┌──┬──┬──┬──┬──┬───┐ 
│領域│申請│採用│面接│不採│採用率│ 
│人文│. 705│ 64 │ 14 │. 627│. 9.1% │ 
│社会│. 711│ 64 │ 16 │. 631│. 9.0% │ 
│数物│. 736│ 67 │ 16 │. 653│. 9.1% │
│化学│. 168│ 15 │ . 5 │. 148│. 8.9% │
│工学│. 376│ 34 │ 11 │. 331│. 9.0% │
│生物│. 546│ 50 │ 12 │. 484│. 9.2% │
│農学│. 492│    │    │    │      │
│医歯│. 402│ 36 │ . 9 │. 357│. 9.0% │
└──┴──┴──┴──┴──┴───┘
(出所)2ちゃんねる「学振・科研費総合スレ Part 22」>>6より。
なお、採用率は面接免除 (小数点第二位を四捨五入)

なんと採用率が約10%もあります!

こう聞くとすごく低いじゃないか!といわれそうですが、
研究者を目指す場合、これが一番採用率が高い職なんじゃないでしょうか?

この2ちゃんねる調べのデータが正しいとすれば、どのジャンルでも採用率は横並びということです。

平成18年度の社会科学分野の場合、申請者748人で採用者82人ということです。

748人中、上から82位までに入れば良いだけです!

楽勝じゃないか!?


なお、平成18年度の社会科学分野の場合、申請者748人で採用者82人というところは私自身もお手紙で数字を確認しました・・・。

この数字を見たということは・・・。

私の場合を紹介しましょう。

D3(後期博士課程3年)のとき:平成18年

3月くらいに募集が出ます。
5月くらいに応募書類を書き、提出します。
6月から10月は祈るように待ちます。
10月末に結果が来ます。

結果: 不採用・・・。死ねます。

この不幸の手紙をもらうと、もれなく1年間の兵糧攻めにあいます。

落ちたときは、発狂しないように配慮しているのか、
不採用者のうちのおおよその順位を教えてくれます。

不採用者のうちの上位20%はA、20%〜50%がB、50%未満がCというABCで教えてくれます。

他にも、「研究者としての能力、将来性」、「研究業績」、「研究計画」からなる「総合評価」も教えてくれます。

「総合評価Tスコア」というのも教えてくれます。

恥ずかしながら、私のスコアをさらしておきましょう(平成18年度の不採用時)。

不採用者のうちのおおよその順位:A
研究者としての能力、将来性:3.50
研究業績:3.83
研究計画:3.33
総合評価:3.50
総合評価Tスコア:3.280

臥薪嘗胆のため、胆の代わりにこの結果をここにぶら下げてあります。

OD1(オーバードクター1年目)のとき:平成19年

3月くらいに募集が出ます。
5月くらいに応募書類を書き、提出します。
6月から10月は祈るように待ちます。
10月末に結果が来ます。

結果: 採用!
しかし、就職が決まっていたので時すでに遅し・・・。辞退しました。

あと1年早く受かっていたらもっと楽だったのに・・・。

なお、結果の通知のお手紙は、採用の時は「・・・書類選考の結果、面接を免除して採用する予定しておりますので通知します。」と素っ気ないです。



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奨学金返済免除について

優秀な成績だと、奨学金の返済が免除されるという仕組みがあります。私も全額免除してもらうことができました。

しかし、こんなコーナーを作っておいてなんですが、どういう理由で誰が免除になるかはけっこう曖昧な感じがします。論文数やひょっとしたら成績なんかも関係あるのかもしれません。論文も雑誌のクオリティだと私よりも良い所に載っている人もいたので・・・。頑張ってみて、あとは運ですね(汗)

論文がうまく載った人は就職ゲット&奨学金免除でwinner-takes-allという勝者総取りで、うまくいかなかった人は就職も得られず奨学金の返済も重くなるというシビアな院生生活です(汗)



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